IFUJI'S OVALBOX

OVAL BOXは、薄板を曲げて作られる楕円形の箱の総称ですが、
IFUJIのOVAL BOXはアメリカ合衆国のシェーカー教徒によって
18〜20世紀にかけて作り続けられていた“SHAKER BOX”を復元したものです。

シェーカー(SHAKERS)とは

シェーカーとは,アメリカ合衆国で始まったキリスト教の宗派で、またの名をキリスト再臨信仰者協会と言う。独立戦争時代にはじまり、最盛期の1840年代には19の共同体に約6000人が暮らしていたが、その後は衰退した。独身主義と共同生活を特徴とし、手工業製品や農作物の販売などを行なって収入を得ていた。デザイン性の高さから家具やOVAL BOXなどの木製品は世界的に評価が高く、北欧家具にも影響を与えた。

IFUJIのOVAL BOX

井藤がシェーカーのBOXのことを知ったのは1980年代初めのことです。
当時、愛読していた雑誌に掲載されている記事を読んだ時、この素朴な木の箱が、その後の井藤の人生にとって大きな意味を持つことになるとは、当時は知る由もありませんでした。

大学で日本やアフリカの文化について学んだのち、会社勤務を経て木工家を志すようになった井藤は、十数年の時を経てシェーカーと「再会」します。弟子入りした工房の師匠・永田康夫がシェーカー様式の家具の作り手だったからです。

独立して自分の工房を持った井藤は、シェーカーに影響を受けた家具を作り始め、同時にOVAL BOXについての制作方法の研究に着手します。当時、国内でOVAL BOXを制作した事例はほとんどなかったため、海外から書籍を取り寄せ、インターネットで情報を集め始めます。その時にネットで知り合った人物が合衆国の木工家・John Wilsonでした。

John Wilsonは、ミシガン州立大学で人類学の教員を務めたのち、木工家となったという異色の経歴の持ち主です。ゼミの実習課題にする素材を図書館で探しているときにシェーカーのOVAL BOXのことを知って興味を持ち、その歴史や制作技法について調べ始めます。当時の合衆国ではすでにOVAL BOXの制作技法は失われていたため、文献や博物館の収蔵品、教団関係者などに調査を重ねるなかで、Johnはその復元に取り組むことを決意し、大学の職を辞し、その後の生涯をOVAL BOX研究に捧げることになります。彼は調べた成果を雑誌などで発表し、全米各地でワークショップを開催するなど、OVAL BOXを現代に蘇らせた功労者となりました。

井藤はJohnとの手紙や電話でのやりとりを経て、2005年に初めてOVAL BOXを制作します。もしJohnとの出会いがなければ、IFUJIのOVAL BOXはいまと異なるものとなっていたかもしれません。Johnはシェーカーのオリジナルのパターンを再現することにこだわり、ほとんどの工程を往時そのままの作り方で行う技法を確立しました。IFUJIではJohnから学んだ方法に独自に改良を加えていますが、基本的にシェーカーの技法を踏襲しています。パターンは現在もJohnから入手したもの(シェーカーのオリジナルと同一のもの)を一部で使用し続けています。
John Wilsonは23年春、惜しまれながらその生涯を閉じました。Johnが生涯を捧げて復元させたOVAL BOXの伝統は、IFUJIのBOXにも受け継がれています。